「死亡確認」のバランスシート

「心肺停止」=本当に「一刻を争う事態」なのか? なのです。

あたしが救急当直とかしてたのははるか昔の研修医の時だけなのですけども、ぶっちゃけ「今から心肺停止が救急車で来る」と連絡来ても実はそこまではスイッチ入らなかったのです。∵そーいうのは大抵「既に死んでるから」 むしろ形式的に心マしてから「病院で死んだ」として死亡診断書作成の路線か、それとも「死体が運ばれてきた」として死体検案書路線にするかの空気を読むのが主な心労。

個人的には実感としても:心肺停止=「一刻を争う事態」というよりはむしろ=「既に事は終わってる」というのが大多数と思うのですよね。

市街地で人前で心筋梗塞やら不整脈で倒れたのならば、その場で心マ・人工呼吸を速攻でやって救急車で運べば救命可能性ありますが(っていうかそういうの以外で救命可能性無し)、3000メートル超で心肺停止なんてのは現実的には「とっくに死んでる」ということと全く当価なわけです。言い換えると自動的に「黒タグ」でしょう。

要するに今回の事例は「緊急で死体収容」する=「死亡確認を病院でする」ために、熟練隊員数人の生命と機材を危険に晒して、且つ、実際にそれらを失ったということです。バランスシートとしては最初から論外だと思うのですよね。

殉職した方々の命懸けの働きを貶める気は毛頭ございませんが、これは司令部が最初から出動の適応無しと判断したほうがよかったような気がします。



http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090913k0000m040111000c.html

 岐阜県高山市北アルプス奥穂高岳(3190メートル)で県防災ヘリコプター「若鮎2号」が墜落し、搭乗員3人が死亡した事故で、同機は3000メートルを超える山岳地帯での救助経験がなかったことを12日、県防災課が明らかにした。97年の同機導入と同時に県庁入りした操縦士の朝倉仁さん(57)は同機専従で、同様に経験がなかったという。


 県防災課の鈴木金治・防災対策監によると、遭難の119番があると県防災航空センターに連絡が入り、センターは岐阜県警察航空隊と調整、県防災ヘリと県警ヘリのいずれが出動するか決める。だが現場が険しい山岳地帯の場合、これまで県防災ヘリが現場で救助にあたったことはなかったという。


 若鮎2号も導入以来、北アルプスのふもとのヘリポートまで救助に向かったことはあるが、3000メートル以上でホバリングして遭難者を引き上げた経験はなかった。


 だが今回は両者が協議し、県警ヘリは出動しなかった。鈴木・防災対策監は「警察航空隊からセンターに『警察に直接通報がなければ出動できない』と説明があったと聞いている」とした上で「一刻を争う事態だったので出動した」と説明した。県警幹部は「事実関係を確認したい」としている。