医療崩壊情勢下での自分の立ち位置(その2)

(承前)

プロフィールにある通り、小生は大学病院の教官ということになります。そして自己中心的なナマケモノです。

当初は留学よりの帰国時にテキトーにドロッポしようかとも考えたのですが「浮世の義理」で一旦は大学に籍を置いたのです、。最初は純粋に「義理」ですぐ出て行くつもりでしたが実際は案外と結構面白いです。今は自分的にはがんばって仕事してて結果的には地域医療にちゃんと貢献してるつもり。収入は普通の病院の常勤医くらいはある。あと最初はなんとも思わんかったですが学生とか若いのが大勢居るのは活気があって楽しいことです。

異端的な意見に聞こえるかもしれませんが、十数年前の大学病院よりは今の「独立行政法人」後の方があたし的にはハッピーな環境と思います。国鉄やらの民営化とかと似たようなもので、「形式」を変えるとあとから実質の変容も少しずつ着いてきます。要するに金稼ぐ方がエラい。だからボディブローの様に大学の中で医師の立場が強くなっていくと思うのですよね(赤字垂れ流し科の事は置いておいて) そういや昔はもっと「患者さん中心主義」「滅私奉公」って類のお為ごかし多かったです、今はあんましにストイックな物言いを公然と馬鹿に出来る、これだけでもかなり良い。モンスターペイシャントははっきり「敵」のカテゴリーと認識→迎撃方針に変更→警察OB雇用みたいに(w


ただそれで大学にずっとおるかというと「無いな」と思います。医者が大学にずっとおるというのは「教授になる」ということです。…「万年准教授で居座る」というのもありますがそれはまた別の話(笑) 最近は多少は反省もあるようですが結局のところ今も昔もお医者さんの出世というのは「教授」「国立などの病院長」になることで、このための必要条件が「学術論文」をたくさん書くことであります。

つまり学者さんのヒエラルキーを登ったひとが職能としての医師を代表するということです。例えてみれば政治学論文の学術的価値で閣僚に出世出来たり、経済学の論文(経済史でもなんでもよいです学術的価値があれば)でなんかの会社のCEOになるような感じ、。
省庁で言えば百年も前から部局組織図や次官コースが変わってないみたいな、。

で、これが20年前だったら、あたしもに医者として素直に研究がんばって教授目指したと思います。

この世界でも「昔は男子はすべからく自動車命だったけど、今はそこまで・・・」みたいなことがやはりあるのですよ、、そりゃあ小生も研究に全く興味無いとは言いませんよ。でもねえ人生をそれに賭けたいか?っていうとNOです即答。この十年で一秒たりともブレたことがありません。

一方で「教授になるということ」自体、これもねえ自分自身がそこまで興味の無い研究をひとにさせて博士号取得の面倒をみる・・・想像しただけで嫌。それ以上に、地方の医療崩壊前線県の教授とかなっても、それは昭和18年末の「硫黄島守備隊の旅団長拝命」とかみたいですからね。

私に取っては「研究がんばって教授目指せ」っていうのは、さして興味の無い自動車関係の競技会とかで「全力でがんばれ、それで入賞したら賞品にGMのハマー貰える」ってのと一緒な訳です。そりゃあ車にそこまで興味無くてもBMWの7シリーズとかポルシェなら喜んで頂きますよ、でもGMハマーってそれを生活のど真ん中に、っていうかその車をいわば「人格の一部」にする人生でしょうが。


それから
大学病院はその他の市中基幹病院みたいな一般救急当直は無いのです。前記事の基幹病院よりは時間的拘束ははるかにゆるいです。でもやっぱり専門科限定とはいえ当直やオンコールは准教授以上の職位になるまではある。

であたしはこの当直とかオンコールって大嫌いなのです。
例えば明日が6時半に起床して空港行かねばならないと判っておっても興が乗れば4時間半の睡眠時間でOKという勘定で2時AMくらいまでは読書とか出来ます。これが当直で明朝8時半までdutyとした場合、12時くらいにsaveモードに無理やり入らないといけません、それで結果的に一度も起こされないかもしれないが、2時・4時・5時となにかで起こされるかもしれない。端的に言えばこのようなペース配分と待機エネルギーの無駄を強いられることを憎悪してるわけです。


ってことでそろそろドロッポしようというのがあたしの立ち位置。

だいたいぶっちゃけあたし大学でいつまでも遊んでていいお大尽のとこの子でもないんです、ナマケモノなので勿論early retirement志向ではありますが=未だ残ってる割の良いカッパギ仕事をして自宅を購入などして、あとは最低限のキャッシュフローをダラダラ維持というラフデザイン。

ちなみにあたしそんなに金かかる趣味は無いです。基本趣味は読書:かなりヒマで無いと「新古今和歌集(&解説)」とか読んで楽しめんでしょ?、あとAVルームにヒキコモリ:オペラ・バレエ鑑賞のために自宅にまあまあのハイエンド視聴環境整え+年に2-3回どうしても生で観たい舞台を海外に見に行く。あいまに時々与論島とかでスクーバ+信州のどこか(BGMが流れたりしてないとこ)とかでスキーする。お酒をキャラクラーと気分によって清水焼とか江戸切子とかのぐい飲みで飲む。ワインはリーデルのヴィノムで今のとこは満足。
東京に住んでもいいけど、仕事がそこまで忙しくなければ京都・金沢・札幌・那覇のどれかでもいいし。

今ならそこまでは興味もない「研究」と商品「ハマー」獲得杯最終レースのエントリーを放棄すればなんとか実現可能、しかし最近の「医療崩壊」で「ダンピングドロッポ」って人種のせいでそんなゆっくり出来ないかもしれません。

あーそうそう、ISOの有用性の話:
私もそうなのですが結局10年とか大学医局人事周辺に居って専門医とか医学博士とかなってるのは、「浮世の流れ」ってのが大きい。それが研修自由化による「医局離れ」とかで最初からまったくしがらみのないひとらが増えると、ドロッポ労働市場が荒れるのですよね。検診とかコンタクトレンズバイトとかえらいことになってます。あと都市部の救急でないぬるい病院の給料とか驚くほど安い例を聞くようになりました。

で、この例の国際ヤクザのISOの出番です。
例えば消化器内視鏡バイト。
「品質管理目標」設定→「消化器内科専門医がこの検査は施行せねばならない、単なる内科認定医が内視鏡するのは云々、いわんや認定医もないのは品質的に云々」

私の言わんとすることがお分かり頂けますでしょうか?